ペットロス
ある日、友人の犬が死んだと聞いた。病死だと思ったので、12歳でなら寿命かなと言うと息子が買ったばかりの新車でひいてしまったと。
一瞬の絶句、私も何度も会っていたしペットとはいえ家族同様だから悲しみも深いうえにひいてしまった息子のことを考えるといたたまれなかった。
日中、玄関先に長いリードでつながれていた犬は庭先を自由に行き来して駐車スペースのコンクリートうえで寝そべっていた。今までは車が動くときには起き上がりゆっくりとずれていたのに新車の静かなエンジン音に反応せず、ひかれてしまったのだ。
家族か何日も泣くので、友人は息子のことを考えると悲しんでばかりもいられなかったそうだ。ひいた本人もどうしようもない気持ちになったことだろう。
翌日、友人は息子に家族の誰がひいたとしてもおかしくない飼いかたをしていたのだから考え込むなとLINEをおくった。
考え込まないようにするよと返信があり、仕事から帰ってきた息子は『ありがとう』と言って親の気持ちを素直に受け取ってくれたという。
人は忘れる動物だから生きて行けるというが、まさにそのとおりだと思う。産まれるときから母親の体内で記憶喪失物質を浴び産道をの苦しさを忘れる。
完全に忘れ去ることはできなくとも悲しみを背負ったまま生きていくことはできないのだから時の経過とともに薄れていくのを待つしかない。
新車が手に入り喜んで注意力が足りなかった友人の息子は、これからは今までよりも注意力を持って運転するようになるだろう。
#ペットロス
#小さな命からの教え